君が好きだと叫びたい~ぽむもち、ラッキーライラックとの思い出2歳編~
どうして君を好きになってしまったんだろう―――
そんな歌を聞くとふと思い出す。
好きで好きで、追いかけた貴女。
ラッキーライラック。
なんだか少しおセンチな始まりですが、エリザベス女王杯2連覇という偉業を成し遂げたラッキーライラック(以降、ラックちゃんとも呼びます)についての私の気持ちをどんどこ書いていこうと思います。
初めて出会ったのは夏の新潟開催。
を、京都競馬場のパークWINSでかき氷片手に見る私。
競馬にハマりだし、とりあえず土日暇やしと京都競馬場に夏のあいだ、アラサー女子が彼氏も作らず土日に競馬場(しかも開催してない)に足繁く通い、親に心配され、そんな事は何処吹く風と大スポとかき氷(時にビールもしくはレモンサワー)片手に観戦するのが幸せだったあの頃。いや今も確実に幸せになれる夏のひとときだと思う。
次のレースは、と大スポで確認すると新潟の新馬戦。
おっ、当時新種牡馬のオルフェーヴル産駒おるやん。
ラッキーライラック…しかも(うちの好きな)(特に顔)松永幹夫厩舎。
応援するしかないなと締め切りギリギリで単勝100円を買い、そのままレースを忘れてビールを買いに売店へ。
そしたら聞こえてきた「ラッキーライラック、ゴールイン!」
おっ?ってことはさっき単勝買ったミッキー厩舎のオルフェ産駒勝ったやん!
ありがとう、ビール代の足しにもなったし、これから応援するね!と加入したばっかのnet競馬のお気に入り馬にひとまず登録。
本当に軽い気持ちだった。
ビール代出してくれた。
(主に顔が)好きな松永幹夫厩舎の子。
オルフェーヴル初年度産駒。
まさかこれが私の心を揺さぶって、時に笑い時に泣き、そんな思い出の1頭になる馬の出会いとはこの時ご機嫌で1人ビールを飲み干すアラサー女には分かってなかったのだった。
時は流れて10月末。
世の中は秋の天皇賞、キタサンブラックは宝塚記念で大敗したがここで持ち直すのだろうか。しかも明日は天気が荒れるみたいだし…そんな疑念渦巻く週末の土曜日。
好きなタイプはキタサンブラックですと公言していた自分も例外に漏れず、キタサン大丈夫かな、ううん大丈夫!だってキタサンだもんっ!と恋する乙女のような気持ちで週末を乗り切ろうとしていた。
ちなみにこの時は仕事の関係で、何故か昼からダラダラと酒を飲んでいた。
ダラけすぎて各々好きなことをしている。
じゃあ私も好きなことをしてやろうじゃないかとnet競馬を開いた。
あら今日、重賞あるじゃない!
アルテミスS…2歳牝馬の戦いね。どれどれ…と馬柱をみたら「7枠13番 ラッキーライラック」。
あっ、この子!あの時の!
せっかく新馬戦応援したんだ、ここも応援するのが筋じゃないか。
そんなこんなで満足していると、だらけた飲み会の話題が競馬へと移る。
「明日の秋天どうなん?」と話を振られると、好きなことには饒舌になるのはオタクの性。
とにかく語った。別に聞かれてもいないキタサンブラックの血統の話まで、まるで水を得た魚のように語った。
そして、「で、これが明日の出馬表なんですけど~」とnet競馬を開いたとき。
トップページに
「アルテミスS ラッキーライラック重賞初V」
と見えた。
えっ、ラッキーライラックまた勝ったの。
すごいよあの子すごい。
思わず「やった、勝った」と感嘆の声を上げた。
その瞬間「ここはねーやん(私のニックネーム)の奢りやって!」との感嘆の声も周りから上がった。
払い戻し金880円で何をどう奢れというのか。
なにはともあれ、新馬戦でいろんな理由が重なったからとは言え買った馬がここまでトントンとスター街道を邁進していっている。
もしかしたらラッキーライラックという馬は相当な馬なのではないか。
これも何かの縁だ。追いかけ続け、応援するしかない。
そう心に決めた土曜日の夕方だった。昼から飲み続け、胃はもたれていたが心はこんなにも晴れやかな気持ちだった。
月日は流れ、暮れの忙しい時期に入った。
仕事も忙しいが、もちろん競馬も忙しい。そろそろ控える2歳頂上戦に向けて、上司が私に声をかける。
「おすすめの2歳教えてほしい」と。
私は「注目されてるのはオルフェ産駒のロックディスタウンですけど、個人的に注目は同じオルフェ産駒でもラッキーライラックです!」と満を持して答えた。
そしてオタクよろしくラッキーライラックの布教活動に入ろうとしたその時だった。
「へぇ~お母さんの名前がストレイキャットやから、ロックディスタウンか!面白いな~覚えとこ!^^」
そうだった。上司は往年の洋楽オタクだったのだ。
そこからストレイキャッツの話を延々と述べられ、ラッキーライラックに対する布教を挟む余地がなかった。
私がオタクとして敗北した瞬間だった。
ちなみに余談だが、阪神、京都と関西の中央競馬のGI絶対行くマンの私がどうしても何か予定が入ってしまったりで行けなく、微妙に相性の悪いレースがある。
それが菊花賞、マイルチャンピオンシップ、そしてジュベナイルフィリーズ。
この年のジュベナイルフィリーズも、例に漏れず予定が入ってしまい現地開催が叶わなかった。
見に行きたかった舞台のチケットを、上司(往年の洋楽オタク上司とはまた別)が取ってくださった日がジュベナイルフィリーズとだだかぶりしたのだった。
あぁレディベス(※見に行く予定の舞台)めっちゃ楽しみやけど…JF…応援すると決めた馬がいるのに…。
そう、ラッキーライラックが出走予定なのだった。
相手はルメールの乗るあのロックディスタウン。牡馬に混ざって札幌2歳ステークスを下している。
強敵には変わりない。だけれども私はラックちゃんを応援すると心に決めている。
「ラッキーライラック!応援しといてな!!」
そう母に言い残し、私は舞台を見に外へ出た。
母もいきなり「ラッキーライラックを応援しろ」なんて言われて困惑したに違いないだろう。
しかし、約束を守る人なのだ。私の母は。
舞台も終わり、加藤和樹めっちゃかっこよかったやんと夢現もそこそこに、祈るような気持ちで携帯の電源を付けた。(観劇中は携帯の電源はオフにしようね♡)
画面が立ち上がり、net競馬のページを開くまでもなく飛び込んでくる母からのLINE。
「ラッキーライラック勝ったで!すごいやんおめでとう!」
体の力が一気に抜けていくのを感じた。
ああやっぱり応援していこうと思えて良かった。
ここまで私の気持ちを揺さぶってくれる馬に初めて出会えた。
競馬をやってて、こんなに楽しく幸せなことはない、と。
「あと、ラッキーライラックのジョッキー(石橋脩)イケメンやったわ^^」
さすが、約束を守る上にイケメンに対する嗅覚がすごい母だった。
ちなみに母もジョッキー時代の松永幹夫のファンだった。
理由はもちろん「イケメンやったから」。
ゆるぎなく私たちは親子なんだと感じさせられた。
兎にも角にも、2歳牝馬の頂点に上り詰めたラッキーライラック。
私の頭も有頂天になっていた。(馬主でもないのに)
このまま三冠馬なんてなっちゃったらどうしよう。
こんな幸せなことってある?キャー!
なんて呑気に考えていた。
年明けに途轍もない牝馬が始動しようとしていることは、この時何も知らなかった。
知らないままでよかったのだと…。